季節が進み、園でも運動会の準備が少しずつ始まる時期になってきましたね。
「1歳児に運動遊びって必要なの?」と思う方もいるかもしれません。
実は、この時期の運動遊びは“体を動かす力”だけでなく、“自分でやってみようとする気持ち”を育む大切な時間なんです。
歩き始めたばかりの子や、走ったり登ったりに挑戦する子など、発達の段階はさまざまですが、1歳児ならではの遊びを通して「できた!」という喜びを味わうことができます。
保育の現場や家庭でのちょっとした関わりが、子どもの成長をぐんと後押ししてくれるんですよ。
この記事では、1歳児の発達に合わせた運動遊びのねらいや具体的な遊び方を、保育園と家庭の両方の視点から紹介していきます。
運動会を控えた今だからこそ、改めて1歳児の運動遊びの大切さを一緒に考えてみませんか?
それでは、いってみよー!
1歳児の発達と運動遊びのねらい
1歳児の発達過程
1歳児は、歩き始めから少しずつ走ったり、段差を登ったり降りたりと、運動の幅がぐんと広がっていく時期です。
ここでは、発達の主な過程とそれに合わせた運動遊びのねらいをみていきましょう。
① つたい歩きからひとり歩きへ
1歳児の多くは、家具や保育者の手を支えにしながら歩く姿から、だんだんと支えなしで歩けるようになっていきます。
転びながらも何度も挑戦することで、足腰の筋力やバランス感覚が育ちます。
歩けるようになると、自分の行きたい場所へ行ける喜びが広がり、探索意欲や自立心も育ちます。

② よちよち歩きから安定した歩行へ
最初はふらつきながら数歩進む程度ですが、繰り返し挑戦する中で少しずつ安定して歩けるようになります。
園庭やお散歩の中でいろいろな道(芝生・砂利・土など)を歩くことで、足の裏から多様な感覚を得て、体のバランス感覚も育ちます。

③ 走る・止まる・方向転換
歩行が安定すると、短い距離を走ろうとする姿が見られます。
走る・止まる・方向を変えるといった動きは、全身の筋力や体の調整力を育てます。
安全な広場や園庭で、思い切り体を動かせる環境が大切です。

④ 登る・降りる
段差や遊具の階段に興味を示し、自分で登ったり降りたりすることに挑戦します。
「やってみたい」という気持ちを尊重しながら、危険のない環境で挑戦できるようにしましょう。
この時期の登り降りは、足の筋力だけでなく、全身のバランス感覚を大きく育てます。

⑤ジャンプ
両足をそろえて「ぴょん」と跳ぶ動きは、1歳後半から少しずつ見られるようになります。
最初はその場での小さなジャンプから始まり、やがて前に跳ぶ、マットや段差から跳ぶなどに発展していきます。
ジャンプは足腰の筋力やバネを育てるだけでなく、「できた!」という達成感も大きく味わえる動きです。

⑥ またぐ
低い段差を「またいで進む」動きは、足を交互に大きく動かすバランス力を育てます。
またぐ時にしっかり足を上げることで、歩行がさらに安定していきます。
園庭や室内でも、ロープやフープなどを使って楽しみながら取り入れられます。

1歳児の運動遊びのねらい(体づくり・心の安定・感覚の育ち)

体づくり
1歳児の運動遊びのねらいの一つは「体づくり」です。歩く・走る・登る・ジャンプするなど、全身を使った動きを繰り返すことで、足腰や体幹の力が育ちます。
また、段差をまたいだり、ボールを押したりする動きも取り入れることで、バランス感覚や体の調整力が高まります。
体を動かす心地よさを味わうことで「もっとやりたい!」という意欲も育まれ、次の挑戦につながります。
心の安定
1歳児の運動遊びには「心の安定」を育むねらいもあります。
自分で歩いて行きたい場所に行けたり、ジャンプや登ることができたりすると、「できた!」という達成感が大きな自信になります。
また、保育者や大人に見守られながら安心して挑戦できることで、「守られている」という気持ちが育ちます。
友達と一緒に走る・止まるなどの簡単なやりとりを通して、人とのつながりを感じ、心の安定にもつながります。
感覚の育ち
1歳児の運動遊びには「感覚の育ち」を促すねらいもあります。
芝生や砂、マットなど、いろいろな場所を歩いたり走ったりすることで、足裏から多様な感覚を経験できます。
走って止まる、合図で動きを変えるといった遊びは、体の動きと聴覚・注意力を結びつける大切な体験です。
五感を使った体験が広がることで、体と心の発達がより豊かになっていきます。
保育指針における1歳児の運動の位置づけ
保育所保育指針では、1歳児期の運動について次のように示されています。
乳児期を経て、歩行の開始など心身共に様々な力をつけてきた子どもは、旺盛な好奇心を周囲の環境に向けて積極的に関わろうとする。一人で遊んだり、保育士等と一緒に遊んだりする中で、伸び伸びと十分に体を動かし、思いを実現する体を獲得していく。そして、様々な遊びを楽しむ中で、走る、登る、跳ぶ、蹴る、投げる、もぐる、くぐるなど、体の様々な動きや姿勢を伴う遊びを繰り返し楽しむ。そうした遊びは子どもの行動範囲を拡大し、身体や運動の機能を高めるとともに、人やものとの関わりを更に広げていく
簡単にまとめると、「1歳児の子どもは、遊びながら体をのびのびと動かし、いろいろな動きを繰り返すことで少しずつできることを増やしていく。こうした遊びは、体の発達だけでなく、人や物との関わりを深める大切な時間でもある。」ということ。
自分でやってみようとする気持ちが強くなる時期。1歳児の運動遊びは、身体の機能を高めるほかにも、環境へのかかわりも深めてくれます。大人が温かく見守り、挑戦を応援することで意欲もどんどん大きくなりますよー。
【保育園で取り入れたい】1歳児のおすすめ運動遊びTOP5
1.トンネルくぐり
ねらい
体を小さくしたり伸ばしたりして、全身の動きを楽しむ。
遊び方
段ボールや布トンネルを用意し、「いないいないばあ!」と声をかけながらくぐるように誘います。
慣れてきたら、おもちゃを持って通ったり、反対側で保育者が名前を呼んであげたりするとより楽しくなります。
ポイント
無理に通らせず、安心できる雰囲気を大切に。自分から「やってみたい」と思えるような声かけを意識しましょう。
2.ボール遊び(転がす・投げる・追いかける)
ねらい
手先を動かす力や、体を上手に動かす力、目で動きを追う力を育てる。
遊び方
柔らかいボールや軽いボールを使って、転がしっこからスタート。
慣れてきたら「どうぞ」と声をかけて手渡し投げをしてみましょう。
ボールを追いかけたり、集めたりするだけでも十分な全身運動になります。
ポイント
ボールの色や大きさを変えると興味が長続きします。
「コロコロ~」「ポーン!」などの言葉を添えるとさらに楽しくなります。
3.サーキット遊び(段差・マット・平均台もどき)
ねらい
体のバランスをとる力や、全身を上手に動かす力、「やってみよう!」という気持ちを育てる。
遊び方
マットや低い箱、クッションを並べて、登る・降りる・またぐ・渡るといった動きを連続して行います。
ゴールには好きなものを置くと、「行ってみよう!」という気持ちが高まります。
ポイント
一人ずつゆっくり挑戦できるようにして、安全確認を忘れずに。
保育者が並走して「上手に登れたね!」と声をかけると、自信につながります。
4.新聞紙・ビニール遊び(破る・丸める・投げる・集める)
ねらい
指先を動かす力や、気持ちをのびのび発散する力、体を動かす力を育てる。
遊び方
新聞紙をビリビリ破ったり、丸めて投げたり、集めて舞い上げたりします。
ビニール袋を膨らませてボールのように投げ合うのもおすすめ。
ポイント
破る感触が楽しく、ストレス発散にも。
遊びの後はみんなで集めて「お掃除ごっこ」をするのも楽しい流れです。
5.しっぽ取り(簡単バージョン)
ねらい
保育者や友達と関わりながら、走る・止まる動きを楽しむ。
遊び方
ハンカチなどをズボンに挟み、「しっぽ取っちゃうぞ~!」と声をかけながら軽く追いかけます。
まだ走れない子は、座って保育者のしっぽを引っ張るだけでもOK。
ポイント
速さや距離を子どもに合わせて調整し、安心して楽しめるようにします。
しっぽが取れたら「やったね!」と笑顔で喜び合うのが大切です。
1歳児の運動遊びは、「できた!」の経験を積み重ねることが大切。
難しいことよりも、「動いて楽しい」「先生と一緒がうれしい」という気持ちを育てていきましょう。
1歳児が運動遊びを楽しむための環境構成と保育者の援助
歩けるようになった1歳児は、気になるものを見つけると「行ってみたい!」という気持ちでいっぱいになります。最初はまだふらふらしていた歩き方も、少しずつ安定していき、両手が自由に使えるようになると、ボールや滑り台などいろいろな遊具に興味を持ち始めます。
保育者と一緒に遊ぶ中で、「楽しい!」という気持ちを味わうと、子どもは自分から遊びを見つけ、どんどん意欲的に体を動かすようになります。
このように、体を動かすことへの喜びや安心感は、心の育ちとも深くつながっているのです。
✅環境構成のポイント
1歳児がのびのびと体を動かせるようにするには、
一人ひとりの発達や興味に合わせて環境を整えることが大切です。
・歩いたり走ったりしても安全なスペースを確保する
・興味のある遊具やおもちゃを手に取りやすい位置に置く
・動線を意識して、つまずきや衝突が起きにくい配置にする
・落ち着いて遊べる場所と、体を動かす場所を分けておく
こうした環境づくりによって、子どもは自分のペースで動き、好きな遊びを見つけて楽しめます。
✅保育者の援助のポイント
1歳児はまだ言葉でのやり取りが難しく、思い通りにいかなくてトラブルになることもあります。
そんなときは、保育者が気持ちを代弁したり、遊びをつなぐ仲立ちをすることが大切です。
・「○○ちゃんも一緒にやりたいんだね」と気持ちを受け止める
・同じ遊具を使う時は順番を伝えて、気持ちの切り替えを助ける
・一緒に遊ぶ中で、やり取りの仕方を自然に見せる
こうした関わりが、子どもが「自分で動きたい」「もっとやってみたい」という気持ちを引き出します。そしてその経験が、心と体の両方の成長につながっていくのです。
家庭でもできるおすすめも1歳児の運動遊びTOP3
1.タオルでひっぱりっこ・お散歩ごっこ
ねらい
腕や足の力を育て、保護者とのふれあいを通して安心感をもつ。
遊び方
フェイスタオルを使って、子どもが端を持ち、保護者が反対側を軽く引っ張ります。
「よいしょ、よいしょ!」と声をかけながら引っ張り合いっこしたり、タオルを持って「おさんぽ~♪」と歩いたりしてもOK。
ポイント
力加減は子どもに合わせてやさしく。
笑い声やスキンシップが自然に生まれる遊びです。
室内でも体をしっかり使えるのが魅力!
2.クッション山のぼり
ねらい
体のバランス感覚や脚力を育てる。
遊び方
ソファのクッションや座布団を重ねて“ふわふわ山”を作ります。
保護者がそばで支えながら「よいしょ」「のぼれたね!」と声をかけると、達成感もアップ。
山を越えたら、トンネル(毛布)をくぐってゴールでも楽しいです。
ポイント
転倒防止のため、下にマットや布団を敷きましょう。
遊びの中で自然に全身を使い、バランス感覚が育ちます。
3.風船キャッチあそび
ねらい
手先の動きと目で追う力(追視)を育てる。
遊び方
軽い風船をポーンと上に投げてキャッチ!
風船の動きを目で追うだけでも脳や体に良い刺激になります。
うまくキャッチできなくても、「もう一回やってみよう!」と繰り返すことが楽しいポイント。
ポイント
風船の色を変えたり、2人で交互に投げ合うとさらに盛り上がります。
お風呂上がりのリラックスタイムにもおすすめです。
家庭で意識したい安全面と環境づくり
家庭で1歳児が運動遊びをする際には、安心して体を動かせる環境を整えることが大切です。床にはマットやラグを敷き、転んでもケガをしにくいように工夫しましょう。家具の角や小さな部品など、危険になりそうなものは取り除きます。
家庭でありがちな危険例
・テーブルや棚の角
・床に伸びたコード
・誤飲につながる小物
・滑りやすいフローリング など
家庭での運動遊びは、「体を動かす楽しさ」と「親子のつながり」を育てる大切な時間。
特別な道具や広い場所がなくても、工夫次第で十分に体を動かす遊びができます。
おうちの中でも「できた!」「たのしい!」をたくさん感じられるよう、子どものペースに合わせて一緒に楽しんでみましょう。
おわりに
いかがでしたか?
1歳児の運動遊びには、「できた!」を重ねながら心も体も大きく育つ力があります。
おうちでも園でも、特別なことをしなくても大丈夫。
子どもの「やってみたい!」を応援する時間こそが、いちばんの成長のチャンスです。
これからも、子どもたちの毎日に寄り添いながら、のびのびと動ける環境を一緒につくっていきましょう
それでは、またやー!
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