ハイサイ、レイジンです。
もうすぐ運動会の季節ですね。沖縄では、すでに終えている園もちらほら。
保育者や子どもたちにとって運動会は大きな行事の一つ。
保護者も多く集まる中での行事となります。
しかし、保育者の中では、保護者が集まるということで、「いいところを見せたい」と練習の際に子どもに対して不適切なかかわりを見せる方もいます。
こうなってしまっては、運動会どころではありません。
今回は、『運動会練習のポイント』を少しかみ砕いて伝えていくとともに、『不適切なかかわりを行わないために』ということも述べていきたいと思います。
それでは、いってみよー
そもそもなぜ運動会を行うの?
運動会のねらい
そもそもなぜ運動会を行うのでしょうか。
「子どものころからあるものだから、やらないといけないんじゃないの?」
と思考停止してしまっている人もいるのでは?
ですが、保育の一環、行事として行うには、しっかりとねらいがあります。一例を見てみましょう。
以上児クラスだと
〇「体を思い切り動かすことを楽しむ」 〇「友達と体を動かすことの楽しさや喜びを知る」
未満児クラスになると
〇「安定した環境の中で体を動かすことを喜ぶ」
といったところ。
キーワードは、『体を動かすことを楽しむ、喜ぶ』です。
指針における運動会の役割を考察してみた
『保育所保育指針』で運動会をどのようにとらえているか確認してみました。すると、運動会というキーワードが出てくるのは3回。372ページある中で、3回しか出てきません。国旗や高齢者とのかかわり、保護者とのかかわりの内容に、出てくるのみです。
なので、指針解説の『健康』から『運動』がどのように記されているのかを、乳児、1歳以上から3歳未満児、3歳以上児と分けて見ていきましょう。
◎乳児
では、さっそく乳児部分の『ねらい及び内容』から引用。
ア 身体的発達に関する視点「健やかに伸び伸びと育つ」
保育所保育指針解説
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力の基盤
を培う。
(ア)ねらい
① 身体感覚が育ち、快適な環境に心地よさを感じる。
② 伸び伸びと体を動かし、はう、歩くなどの運動をしようとする。
③ 食事、睡眠等の生活のリズムの感覚が芽生える。
この時期は、保育士等の愛情、受容のもと、安心した快適な環境の中で、体の動きを行っていくということです。
それに対して保育者は、どうしていくのかというと、
保育士等が一人一人の子どもの発達過程を踏まえ、
保育所保育指針解説
遊びの内容を意図して構成した環境の下、子どもは遊びの中で、はう、立つ、歩くなど体を動かすことの楽しさを経験する。
保育者は子どもの発達を見ながら、体の動きを楽しめるような環境を用意しましょうということ。
個々の発達過程が垣間見えます。
そして、大事なのが次のポイント。
心と体の健康は、相互に密接な関連があるものであることを踏ま
保育所保育指針解説
え、温かい触れ合いの中で、心と体の発達を促すこと。特に、寝返
り、お座り、はいはい、つかまり立ち、伝い歩きなど、発育に応じ
て、遊びの中で体を動かす機会を十分に確保し、自ら体を動かそう
とする意欲が育つようにすること。
心と体はつながっているぞ。『温かい触れ合いの中で、心と体の発達を促すこと。』を大切にすれば、子どもは体を動かそうとする意欲が育つぞというわけです。
1歳児から3歳未満児
続いて、1歳児から3歳未満児。歩くから走る、跳ぶなど体の運動機能が発達してくるこの時期。指針では運動をどのように捉えているか、ねらいの部分を見てみると、
ア 心身の健康に関する領域「健康」
保育所保育指針解説
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。
(ア)ねらい
① 明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しむ。
② 自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。
③ 健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようと
する気持ちが育つ。
自分の体を動かすことを楽しみながら、様々な動きもしてみようという感じですかね。
それに対し、保育者のかかわりは以下に記されています。
保育士等は、この時期の子どもが様々に身体を動かすことを体験するために必要な環境を構成する。子どもの興味や関心に合わせて、段差のあるところから飛び降りる、傾斜のあるところを歩いて上ったり下りたりする、力を入れて遊具を引いたり押したりしながら往復するなど、全身を使ういろいろな遊びを一緒に楽しみたい。体全体を使う喜びを伴った遊びは、運動に関わる諸機能を発達させるとともに、子どもが自分の体で様々な感覚を体験することをもたらす。
保育所保育指針解説
簡単にまとめると、子どもの興味関心に合わせて、段差や傾斜など体を動かせるような環境を用意しましょう。それが、子どもの体の機能を発達させていきますよーということ。
そして内容の取扱い部分から以下の文章。
興味をもったものや遊具で保育士等に一緒に遊んでもらい、遊ぶ楽しさを経験することを通して、子どもは自分から遊び出し、遊びに夢中になり、より意欲的に遊ぶようになる。このように、遊びにおいて子どもの心と体は密接に関わり合っており、保育士等の関わりに支えられて遊び込む経験は、心身両面の発達を促していく。
保育所保育指針解説
保育士が、子どもが興味を持った遊びを一緒楽しむことで、子どもの発達を促すぞということですね。
3歳以上児
では、最後に3歳以上児。
以上児は運動機能が発達し、全身を巧みに使うこともできるようになります。指針では以下のねらいがたてられいます。
ア 心身の健康に関する領域「健康」
保育所保育指針解説
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。
(ア)ねらい
① 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
② 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
③ 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをも
って行動する。
『のびのびと自分の体を進んで動かし、運動をしよう』といういことです。
保育者のかかわりとしては、以下。
幼児期は身体の諸機能が著しく発達する時期であるが、子どもは自発的にその時発達していく機能を使って活動する傾向があると言われている。そして、その機能を十分に使うことによって更に発達が促されていく。したがって、子どもの興味や能力などに応じた遊びの中で、自分から十分に体を動かす心地よさを味わうことができるようにすることが大切である。
そのためには、走ったり跳んだり投げたりといった運動的な遊びはもとより、これにとどまらずいろいろな遊びをすることが大切である。~略~子どもがその活動に興味や関心をもち、自ら心を弾ませて取り組んでいる場合には、体も弾むように動き、そこには生き生きとした姿が見られる。
保育所保育指針解説
『走ったり跳んだりするだけではなく、何かに興味を持ち、夢中になることで、体は勝手に動き出していくぞ』
ということです。
内容の取扱いでは次のようなことが書かれています。
①より
保育士等や友達との温かい触れ合いの中で、遊びを通じて体を
保育所保育指針解説
思い切り動かす気持ちよさを味わうことを繰り返し体験し、次第にいろいろな場面で進んで体を動かそうとする意欲が育つように、保育士等は子どもが自然に体を動かしたくなるような環境の構成を工夫することが大切である。
続いて②
②より
様々な遊びの中で、多様な動きに親しむことは幼児期に必要な基本的な動きを身に付ける上で大切である。~(略)~
保育士等は、遊びの中で子どもが多様な動きが経験できるよう工夫することが大切である。
保育所保育指針解説
まとめると
『遊びを通して体を思い切り動かす心地よさを味わうことが重要だ。
そのために、保育者は子どもが自然に体を動かしたくなるような環境構成、多様な動きを経験できるような工夫をしていくべきだ必要がある。』
といった感じ。
どの発達段階においても『のびのびと』であったり、『体を動かすことを楽しむ』といったことが書かれています。
指針において運動面で重要視しているのは、「体を動かすのって楽しいな。よーし、○○しよう」といったようなこと。
つまり、「体を動かすことは楽しい」と感じてほしいわけです。
運動会練習のねらいとポイント
では、「体を動かすことを楽しむ」といったねらいがある中で、どのように運動会練習をしていけばよいのでしょうか。
レイジンは、練習というよりは、遊びの中で楽しんでいることを行っていけばよいのではないかと考えます。
子どもたちが興味を持っていないことを無理やりやらせても意味がありません。
今楽しんでいる遊びをそのまま出せばよいのです。
それぞれ指針の内容に照らし合わせて例を出していきます。
乳児
指針によると、乳児部分では
〇保育者は子どもの発達を見ながら、体の動きを楽しめるような環境を用意しましょう。
〇温かい触れ合いの中で、心と体の発達を促すこと。
が重要と記されていました。
なので、運動会は一人一人の発達を考慮した内容になるというわけですね。
練習(遊び)の例を出していきます。
例 ①『かけっこ』 →ハイハイしたり、よちよち歩いたり、ずりばいしたり。個々の発達が違っていても、体の動きを楽しめる。ゴールには安心できる親や先生が待っている。保育者は、一人一人の発達に合わせて「歩くの頑張っているね。」「こっちにおいでー」など温かい声かけを行っていく。 ②ふれあい遊び→安心できる親や先生が、子どもに声をかけながら抱っこしたり、座った足の上で抱えたり、一緒にハイハイしてみたり。保育者は、音楽に合わせながら、子どもが安心を感じて体を動かせるように触れ合いを楽しむ。
こんな感じかなー。「運動会に合わせて歩けるようにしなきゃ」「なんで進んでくれないの」などは論外。個々の発達を認めていくことが必要です。
1歳児から3歳未満児
続いて1歳児から3歳未満児。指針で記されていたのは、
〇自分の体を動かすことを楽しみながら、様々な動きもしてみよう
〇子どもの興味関心に合わせて、段差や傾斜など体を動かせるような環境を用意しましょう。それが、子どもの体の機能を発達させていきますよ
〇保育士が、子どもが興味を持った遊びを一緒楽しむことで、子どもの発達を促すぞ
練習(遊び)の例を見ていきましょう。
例 〇障害物競争 →ちょっとした段差や傾斜、しゃがんだりくぐったりできるような個人差に合わせた環境を用意する。楽しそうに保育者が障害物をクリアするなど一緒に遊びを楽しんだり、子どもが安心できるように時には手を添えたりできるように援助していく。 〇かけっこ →思い切り走るのもあり。体を思い切り動かせるように、広さや距離など考慮した場の用意。 子どもが乗り物に興味を持っているのなら、段ボールに穴をあけた車に乗って、子どもたちなりにコースを走ったり進んだりできるようにするなど、子どもの興味関心に合わせて環境を用意する。
安心できる環境の中で、思い切り体を動かすことがねらい。
「なんで歩いているの、走りなさい!」「転んだくらいで泣かないの!」などといった声かけはNG。(普段の保育からNGですが。)
「走って気持ちよかったね。」「ゴールできてよかったね」など子どもが体を動かしたことに充実感を感じられるような声掛けを意識しましょう。
3歳以上児
3歳以上児になるとできることも増えてきますよー。
まずは指針の内容からドン!
〇のびのびと自分の体を進んで動かし、運動をしよう
〇走ったり跳んだりするだけではなく、何かに興味を持ち、夢中になることで、体は勝手に動き出していくぞ
〇遊びを通して体を思い切り動かす心地よさを味わうことが重要だ。
〇保育者は子どもが自然に体を動かしたくなるような環境構成、多様な動きを経験できるような工夫をしていくべきだ必要がある。
以上の4つ。
では、練習のポイントを例に出して見ていきましょう。
〇忍者ごっこから →子ども達は、ダンスで踊っている忍者の曲が大好きで、生活や遊びの中でも忍者になり切る様子が見られてきた。そこで、保育者が様々な修行を設定。子ども達が忍者になり切りながら運動遊びを行っていく。 5歳児になると、「落とし穴をよける修行」などアイディアも出していき、自分たちで実際に作ったりする姿も見られるはず。 〇リレー →走るのを楽しんでいる子どもたち。ルールのある遊びとしてリレーも楽しんでいる。(時折、集団遊びの一環として行っておくとよい)。繰り返し行っていき、ルールのある遊びの楽しさを感じらるようにしたり、思い切り走った満足感や勝った嬉しさ、負けた悔しさに共感していく。 5歳児になると、自分たちで順番を決めたり、作戦を考えたりしながら、自分たちのことを自分たちで決めていく体験も味わえるように。
子どもの興味のある遊びや楽しんでいる遊びを行うことで、子ども達も意欲的に取り組む姿が見られるでしょう。
間違っても、「運動会は○○を行います。よしっ、みんなついてこい!」と先生主導で進めていき、子ども達はただそれに従うだけといった構図にはならないようにしてほしいです。
運動会練習で不適切保育を行わないために
ここまで、運動会のねらいや練習ポイントなどを指針に沿わせながら述べてきました。
ですがこの運動会練習。『不適切保育』が行われやすいんですよねー
理由は、
〇運動会当日は保護者が見に来るので、見映えが気になる。
〇園(上司)の方針として、揃っている隊形、動きを求められる。
〇集団で行われることが多いため、外れてしまう子、集団行動が苦手な子は目立ちやすい。
などが挙げられます。
実際の不適切保育の一例を見ていきましょう。
〇「なんでさっき言ったのにできないの」 〇「もう運動会でなくていいよ」 〇「やる気がないなら外に出て」
辛辣な言葉の数々。ですが、実際に行われている園があります。
このような声掛けやかかわりをしてしまっている園や保育者は、不適切保育だと感じていないのでしょう。
では、不適切保育を行わないためには、どのような意識をもてばよいのでしょうか。それは、
運動会を発表の場と思わないことです
そりゃ、人間です。発表、他者から見られているとなれば見映えが気になります。ですが、子どもにそれを押し付けるのは話が別。
運動会のねらいは、「体を動かすことを楽しむ」「体を動かす喜びを知る」といったもの。
発表の場ととらえるから意識が変わってきます。
娘の園の実践を見てみましょう。
名称:運動会→ファミリースポーツデイ 内容:子ども達だけで、ダンスをしたり、かけっこ、リレーを したりする時間もあるが、親子で様々な運動コーナーを 楽しむ時間も設けている。 子どもが現在興味を持っている遊びも親子で楽しめるよ うな環境も用意。 練習:普段からダンスやリレー、かけっこを楽しむ機会を設け ている。毎日練習が行われるわけではなく、決して無理 強いもしない。遊びの中の一環という姿勢。
子どもに無理強いさせ、見映えはきれいな運動会と、子ども達が体を動かすこと、興味を持っていることを楽しもうという娘の園。
はたして、ねらいに沿っているのはどちらでしょうか。
肌感覚では、前者の対応の園の方が多いのではと感じています。
言ってしまえば、ほとんどの園は運動会に重きを置きすぎなのです。
おわりに
ということで、今回は『運動会練習のねらいと不適切保育を行わないために』ということで、お伝えしてきました。
まとめ!!!
〇運動会のねらいは、「体を動かすことを楽しむ」「体を動かす喜びを感じる」こと。
〇保育指針でも『のびのびと』や『体を動かすことを楽しもう』ということを重要視しているよ
〇運動会練習のポイントは、『子どもが遊びで楽しんでいることを行おう』。というか、練習ととらえない方が良いのでは。
〇子どもに無理強いさせる、脅すなどの『不適切保育』を行わないために、まずは運動会を発表の場と捉えるのをやめよう
以上になります。
ふーかなり長くなってしまったぜ。でも、大切なことなので、たくさん書かせてもらいました。
運動会の持ち方や練習の際にどうかかわればよいのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
それでは、またやー!
コメント
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