ハイサイ、レイジンです。
前回、『不適切保育の深刻な影響~子どもと保育士(保育者)に与える影響が大きすぎた件について~』ということで、記事を書かせてもらいましたが、今回はその続き。
なぜ不適切保育が起こるのか、その背景や防止策について考えていきたいと思います。不適切保育が問題になっている現在、その状況を逆にチャンスととらえ、保育の質を上げていきましょう。
それでは、いってみよー
不適切保育が起こる背景
ここから不適切保育が起こる背景ということで述べていくのですが、決して不適切保育のことを許容しているということではありませんのであしからず。どんな背景があるにせよ、不適切保育はいけないことというのは変わりません。
では、例を一つずつ紹介していきます。
保育士不足と厳しい配置基準
登園してきたAさん。Aさんは、登園の際に玄関で渋ることが多く、担任の手を必要とします。しかし、担任が玄関に出向くと、クラスが2歳児12名に対し、職員が一人になってしまいます。案の定、玄関に出向こうとした際にトラブル発生。クラスが気が気でない担任はAさんに対し、「いつまでもわがまま言って泣いていたら置いていくよ」と言ってしまいました。
保育業界は、近年ずっと『保育士不足』と叫ばれています。人的余裕がある園はほとんどないといってもよいでしょう。この状態は、注意力が不足する事態につながり、不適切保育の原因になってしまいます。
また、『配置基準』の問題もずっと言われてきています。(国が問題視しているかはわかりませんが)
0歳児→子ども3人に対して保育士1人 1歳児→子6:保1 2歳児→子6:保1 3歳児→子20:保1 4歳以上児→子30:保1
4,5歳児の30:1に関しては、この基準が定められてずっと変わらず。1948年からなので、もうすぐ80年になります。1,2歳児の6:1は、1967年から変更なし。もうすぐ60年になりますね。
この基準が厳しいと多くの現場から声が上がっているのに、変更がないということは、予算を未来ある子ども世代には避けないということなのでしょうか。
諸外国はどうなっているのか見ていきましょう、
保育士1人で子どもを何人見るか知っていますか?日本の保育園が世界と比べて非常に危険なその理由とは(ぽん先生) – エキスパート – Yahoo!ニュースによりますと、
・アメリカのニューヨーク州やイングランドでは3歳児だと1人当たり7人。 ・それよりはやや多いと感じるドイツで、3歳児以上は1人当たり13人。 ・スウェーデンでも4歳児以上児で1人当たり13人とされています。
日本の1歳児6:1も厳しいものがありますが、3歳以上の20:1、4歳以上児の30:1は世界と比べても突出して基準が厳しいということですね。その分、保育への余裕はなくなります。
例のような玄関で行き渋りをしている場合も、人員にある程度余裕があれば、もっと子どもの気持ちに寄り添った対応ができたはずです。このような人員的な余裕のなさは不適切保育につながっていきます。
②子どもの人権を軽視している
しかし、いくら人員不足で心に余裕がないからと言って、子どもに対してひどい言葉を浴びせたり、身体的に危害を加えていいわけではありません。次の例を見ていきましょう。
Bさんは排泄のコントロールがまだ上手くできません。外遊び中に、おしっこを漏らしてしまいました。すると保育士は、「ほらね、言ったでしょ。外出る前にトイレに行ってって。みんな見て!こんな風にBさんみたいにお漏らししちゃうから、トイレには先に行っておくんだよ」と皆に排泄の失敗をクラスに見せびらかし、Bさんに大きな辱めを与えたのです。
このような保育士の言動は、子どもの人権を軽視しているとしか言いようがありません。このほかにも、好き嫌いが多いからといって給食を制限したり、言うことを聞かないからと言って身体的に危害を加えるのも同様。精神的、身体的虐待に値します。先生だからといって、子どもより偉いわけではないのです。
子どもの人権を尊重していたら、Bさんの排泄の失敗も「大丈夫?失敗しちゃうこともあるよね。一緒にトイレに行って着替えてこよう」など思いやりのあるかかわりができるはずです。
③昔からのあたりまえを持ち込む
また、昔からのやり方を現代でも持ち込み、時代錯誤のアプローチを行う保育士は一定数存在します。例を見てみましょう。
大人の方が偉いという考えをA保育士は持っており、ある子どもが「○○のほうがいいんじゃない?」と意見をすると、「子どもが大人の言うことを聞かないといけないの」と言って、その意見を一蹴。
行事なども子どもの意見は聞かずに、自分の関心や好みに合わせた活動を重視し、子どもが選ぶ機会は一向になく、自己表現が制約された状態が続きました。
このような例だと、子ども達は「自分の意見は聞いてもらえないんだ」と自己評価が下がっていきます。他にも時代錯誤のアプローチとして、「男らしく」「女らしく」と性別に基づく差別的な期待や、ひらがなを無理強いして覚えさせるなどの過度な学業重視などが挙げられます。
④言い出しにくい環境
不適切保育を行っている保育士に対して、改善を求めるように言い出しにくい環境もあります。例を見ていきましょう。
保育園に20年以上勤めているベテランA先生。A先生は、当保育園の環境などを熟知しており、様々なことに対して意見を求められては、機転良く返していく姿が見られます。しかし、子ども達に対しては『完食を無理強いする』『子どもに対して怒鳴る』『大きい声で威圧する』といった姿が見られます。後輩などはA先生の指示のもと、動いていることもあり、「いけないことなのかな」と思っても、なかなか言い出せなかったり、子ども達がA先生の言うことを聞く(怖いから)ので、その方法が正解と思ってしまう現状があります。
こうなってしまうと、例のような保育園は不適切保育が日常となり、いけないことだということも感じにくい状況が生まれるでしょう。
また、子どもや保護者も「保育士に依存して言い出せない」「子どもが報復されるのでは」「評判を落としてしまう」「信頼関係があるので、なかなか言い出せない」といったことで、不適切な保育が報告されにくいということが想定されます。
不適切保育を防ぐためには
では、不適切保育を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。
①余裕を持った人員配置と保育士不足解消
現在、保育業界は悪循環の一途。保育士不足が叫ばれて久しいですが、解消する気配は一向に見えず、厳しい労働環境から中途退職も後を絶ちません。
海外のように余裕のある人員配置、保育士不足解消で、保育士の心のゆとりを取り戻さなくては、保育の質も上げることは難しくなってきます。
余裕のある人員配置
人員配置は、行政が動かないことには改善はありません。保育士はこの問題をずっと訴えてきています。 保護者の方も保育士不足解消への声をあげてもらうことで、もしかしたら行政も動かざるを得なくなるかもしれません。
保育士不足解消
保育士不足解消は、施設側として、労働環境を変えることで、改善が見られるかもしれません。
・ワーク・ライフ・バランスのサポート ・給与や労働条件の改善 ・研修の強化 ・パートや短時間など柔軟な働き方
などが、施設における施策となるでしょう。
ただし、施設ができることも補助金の関係から限界があります。やはり、子育て支援は国の根幹におけるもの。国が支援をしないと根本的な解決は難しいといえます。
②子どもの人権を学びなおす
不適切保育を行う多くの園は子どもの人権を軽視している状況にあります。
・そもそも子ども達に人権があることを認識していない ・人権に関する知識が不足している
このような意識や保育実践の不足が不適切保育を生み出すのです。では、子どもの人権を守るためにはどうすればよいかというと、
・子どもの人権について学ぶ機会を持ち、意識を高める ・子どもの人権に対し対話する機会を持つ。 ・報告しやすい環境づくり ・実際に子どもの人権を意識した保育を行う。
を行っていくことで、人権を意識した保育が行えるようになっていくでしょう。レイジン的には、 「相手が大人だったら同じことをするのか」という視点に立つことも大事なのかなと思います。
③当たり前を見直す
これまでの経験に裏打ちされた保育は、スムーズに行われ、子ども達の心をつかむことも多いです。しかし、これまで行ってきたことを見直したり、変えたりすることは根気がいります。
人間は現状維持バイアス(変化や新しいアプローチを拒む)という心理作用もあるので、長年の経験を大きく変えることは難しいでしょう。
・継続的に学ぶ機会を設ける ・新しいアイディアや保育方法を奨励する ・指導する立場の人がリーダーシップを発揮する
これらを行っていき、これまでのやり方を少しずつ見直していかなくてはいけません。
④相談できる環境
先輩の保育についてなかなか言い出せない環境もあると思います。その場合は、『園長や副園長に相談する』 が最優先。この問題は、個人の問題ではなく、園の問題。園長や副園長が対処する責任を負うのです。それでも対処している様子がない場合は、市町村役場の管理している課に伝えるしかありません。
園長など施設の責任者が、対応し、改善していくことで透明性が高まり、施設に対しての信頼も生まれてくるのです。
おわりに
ということで、今回は 『不適切保育が起こる背景と不適切保育を防ぐために必要なこと』 を述べていきました。
まとめ!!
・不適切保育が起こる背景として、人手不足と世界的に見ても厳しい配置基準があり、この部分が変わらない限りは保育士に心の余裕は生まれない。
・子どもの人権軽視や昔からのやり方を変えられないなどは、個人や園が学び、知識をアップデートしていくしかない。
・いくら背景があるにしろ、不適切保育はしてはいけない。
以上になります。
不適切保育が明るみになる園がどんどん出てきていますが、まだ氷山の一角だと思います。
しかし、これは保育が変わるチャンスです。まだまだ伸びしろがあるということ。保育界全体で今後も不適切保育問題を捉えていき、透明性のある園運営を行っていきましょう。
それでは、またやー!
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